操体法の解説

「操体法」を初めて眼にした貴方に故橋本 敬三先生ご子息
橋本 恵次氏による解説をお送り致します。

「操体」とは、立って動き回る人間にとって基本的な人体の構造と仕組みとしての骨格と筋肉のかかわり(運動系)を、その成り立ちの根本に着目して誤りなく体をあやつり、動かすことを総称した表現です。単なる運動とか体操とは違い、二足歩行動物としての人間にとって最も自然な身体の動きと、不自然な動きによって起きる体の歪みとを見きわめ、歪みのない体を保つことが操体です。操体の中で、全身から各指先の細部におよぶ具体的で体系的な体の動かし方を「操体法」とよびます。

この考え方と操体の実践を誰にもわかるように組み立てたのは、橋本 敬三医師(1897〜1993)です。橋本 敬三氏は、新潟で西洋医学の道をきわめ、開業医として患者に接した若い時代に民間に伝わる正体術を始めとする東洋医学的な治療をみずから体験しました。こうした体験を通して東洋医学的な治療の意味について研究と実証を積み重ね、努力の末に独創的な健康法としての「操体」を確立し、全国に知られるようになりました。

ところで、この「操体」は実技的な狭い意味だけではなく、極めて奥深い原理原則の一部分であることを橋本 敬三氏は次のように明快に体系化しました。
命ある人の身体は、余程の事情がない限り生まれつき健康で生きるようにつくられている。そして、ふだんは何の気なしに日々を過ごすが、誰もが他の人には替わってもらえない四つの基本的要件を身体のうちに備えており、そのどれ一つを欠いても生きてゆけない。それは、「食べる」「呼吸する」「動く」そして「思いめぐらす」の四つである。しかも、これらは身体の中で今現在互いに相関連しあっている。また、身体は宙に浮いているのではなく、地上のある場所で生きて行くための物質を用い、他の人と交わり人生を体得する。つまり、人は「環境」とのかかわりをもって存在している。それらはそれぞれの法則を備えているから、逸脱すれば全体が歪み、崩れる。
誰もが備えているこうした「生き方の自然法則」を「食・息・動・想の同時相関の体系」ととらえ、生存の土台である「環境」との全体的で総合的な関係として確認しておかねばならない。

創始者亡き後も、師のもとで操体の概念と技法を学んだ人々を中心に毎年全国大会(操体バランス運動研究会)が開かれ、また故人が開設した温古堂を拠点とする普及組織を通じての全国的な交流がおこなわれています。

操体および操体法に関する原典は以下の通りです。
<図書>
・橋本 敬三;温古堂先生・万病を治せる妙療法  農山漁村文化協会
・橋本 敬三;からだの設計にミスはない・操体の原理  柏樹社
・橋本 敬三;論想集・生体の歪みを正す  創元社
・橋本 敬三監修・川上 吉昭編;SOTAI 操体法写真解説集  柏樹社
・橋本 敬三監修・茂貫 雅嵩編著;写真・図解 操体法の実際  農山漁村文化協会
・橋本 敬三:誰でもよく判る操体法の医学  農山漁村文化協会

<機関誌>
・イサキ  温古堂事務局(隔月刊 )

<連絡先>
・操体バランス運動研究会 会長 橋本 雄二(医学博士、橋本クリニック院長)
・全国操体交流会 温古堂事務局気付
 〒980-0822 仙台市青葉区立町27-21-1F
 TEL 022(223)3230 FAX 022(223) 3233
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文責;橋本 恵次